在宅診療

睡眠障害

院長
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在宅診療では一番相談されるテーマで、眠剤の不適切使用は社会問題にもなっています。ここで睡眠障害についてまとめてみましたので、ぜひ読んでみてください

睡眠障害とは

不眠症とは睡眠に関する訴えが,適切な睡眠の環境下において通常 1 カ月以上持続し,日中の疲労,集中力や気力の低下,眠気や気力の低下を伴うと定義されています。

不眠症は罹患頻度の⾼い代表的な睡眠障害の⼀つである。成⼈の30%以上が⼊眠困難、中途覚醒、 早朝覚醒、熟眠困難などいずれかの不眠症状を有し、6〜10%が不眠症(原発性不眠症、精神⽣理 性不眠症、その他の⼆次性不眠症など)に罹患している。不眠(特に慢性不眠)は、眠気、倦怠、 集中困難、精神運動機能低下、抑うつや不安など多様な精神・⾝体症状(daytime impairment、 health-related quality of life QOLの障害)を伴うことが多い。その結果、不眠症は、⻑期⽋勤 や医療費の増加、⽣産性の低下、産業事故の増加など、さまざまな⼈的及び社会経済的損失をもた らすことが明らかとなり、公衆衛⽣学上の⼤きな課題の⼀つとなっている。

こんな症状ありませんか? これは睡眠障害の兆候かもしれません

なかなか寝付けない
夜中に度々目が覚める
早朝に目が覚めて、その後寝れない
ぐっすり寝れた感じがしない
日中に眠気が強く、頭が働かない

高齢者睡眠の特徴

加齢によって睡眠は徐々に短縮し(65歳で6時間程度)、早寝早起きの朝型化の傾向が特に男性で顕著になることがわかっています。睡眠のパターンは加齢により変化し、若年成人に比べて、深い睡眠割合の減少、浅い睡眠割合の増加により夜中に目が覚めてしまう中途覚醒が増え、全睡眠時間の短縮と睡眠効率(臥床している時間のうち実際眠っている時間の割合)の悪化がおこります。
また、高齢者は、全般的な睡眠の質の低下のほか、身体活動・基礎代謝量の減少、うつ病やせん妄、皮膚疾患や泌尿器疾患、薬剤の服用が原因となって不眠を訴える頻度が多くなります。

睡眠障害の原因

高齢者では退職・死別・独居などの心理的なストレスに加えて、不活発でメリハリのない日常生活、身体・精神疾患、その治療薬の副作用などによって、不眠症をはじめとするさまざまな睡眠障害にかかりやすくなります。主な原因として以下のようなものが挙げられます。

不眠と関連する嗜好品・薬物

 就寝前のアルコールの摂取は睡眠の分断を引き起こし,不眠の原因となるほか,睡眠時無呼吸を悪化させる.就寝前のニコチンやカフェインの摂取についても不眠の原因になりうる.薬物では選択的セロトニン再取り込み阻害薬、MAO(monoamine oxidase)阻害薬、三環系抗うつ薬、気管支拡張薬、β拮抗薬、精神刺激薬などの併用も不眠を引き起こす原因となる.

不眠と関連する身体、精神疾患

多くの慢性疾患の合併は不眠の原因となる。うつ病、心疾患、体の痛み認知症は不眠症によく関連すると報告されている。これらの疾患は高齢者では併存する場合が多いため,不眠との関連についての問診は重要である。他に、かゆみ、咳、頻尿なども不眠を起こす原因となる。また高齢者においては以下の疾患の合併にも注意が必要です。

レム睡眠行動異常症(RBD:rapid eye movement sleep behavior disorder)
レム睡眠行動異常症はレム睡眠に生じる睡眠時随伴症である.睡眠中に逃れようとしたり,争ったりする夢に関連した行動異常,夢の行動化が起こります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS:sleep apnea syndrome)
睡眠時無呼吸症候群は睡眠関連呼吸障害のひとつであり,上気道の部分的または完全閉塞による閉塞性呼吸イベントを主体とする閉塞性SAS(OSAS)と,心不全や脳血管障害など中枢性機序の関与により呼吸努力の一過性停止による中枢性呼吸イベントを主体とする中枢性SAS(CSAS)がある.[/ac-box01]

レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)
レストレスレッグス症候群は夜間安静時に,異常感覚を伴う,脚を動かしたくてたまらない衝動のために,不眠,とくに入眠障害や中途覚醒を引き起こす身体疾患に由来する不眠のひとつである.

年齢とともに睡眠は変化します。健康な高齢者の方でも睡眠が浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒が増加します。上記のような睡眠を妨げる病気にかかるとさまざまな睡眠障害が出現しますので、原因に合わせた対処や治療が必要です


画像出典https://www.jmedj.co.jp/premium/treatment/2017/d230602/

不眠症の指導ポイント

最後に、一緒に生活習慣をチェックしてみましょう

ベッドに入るのが早すぎませんか(22時以降が目安)
寝室で読書、テレビ観賞していませんか
就寝前に飲酒していませんか
就寝前にお茶やコーヒーを飲んでいませんか(寝る前4時間カフェイン摂取控えベし)

睡眠障害を認めた場合、まず睡眠衛生指導を行うことが重要です。
例えば以下のような工夫は推奨されています。

眠くなってからベッドに入る
就寝前に音、光(携帯電話、テレビ、LEDライト)を控える
寝る前の飲酒は睡眠の質を悪くします。寝る前の飲酒をやめましょう
寝る前4時間カフェイン(コーヒー、お茶)を控えましょう
朝は決まった時刻に起床し、日光を浴びる
昼寝は短くしましょう

*睡眠のお悩みについて担当医に相談してみてください。

参考文献
<高齢者睡眠障害の特徴とその対策>日本内科学会雑誌 第103巻 第 8 号