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【ACP】人生会議?簡単にまとめてみました!

院長
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人生会議(ACP)という言葉は随分と知られるようになりましたが、その中身がまだ十分浸透していないように感じております。ここで簡単にACPについてまとめてきました。ぜひ読んでみてください

人生会議(ACP)の定義

論文的な定義「将来の医療に関する個人的な価値観、人生の目標、好みを理解し、共有することであらゆる年齢・健康状態の成人をサポートするプロセス」と定義していますが、日本厚労省では「もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて、前もって考え、繰り返し話し合い、共有する取り組み」をACP(人生会議)としています。
患者様が大切にしていることや望み、どのような医療やケアを望んでいるかについて、自ら考え、また、あなたの信頼する人たちと話し合いますが、その中で患者様のご希望や価値観は重要な役割を果たします。

<よくあるACPの誤解>
・最期の迎え方、死に方の準備をする
・医療費削減のため
院長
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誤解されることもありますが、ACPはその人らしく生きるための大事な話し合いです。
ACPの具体例

・患者が大切にしていることについて話し合い、価値観を共有
・今後の治療選択の希望や最期をどう過ごしたいかについて話し合う
・病状や予想される今後の経過を共有

ACPに必要な要素と進め方

病名と病状、予想される今後の経過の共有

これからの治療やケアについて考えるためには病状を知っている必要があります。病名や病状から予測される経過や、受けるであろう具体的な治療やケアなど
について理解しておく必要があります。専門家の医師は病状説明で難しい横文字を使い、一方的に長く喋る傾向があります。説明の途中から内容理解できなくなることもありますので、説明が終わった後に理解度を確認することも重要です。

患者の価値観、希望、生活状況、家族関係の話し合い

「これができないまま生きていくのは考えられない」などの価値観、「こんな最期は嫌だな、こんな治療やケアは嫌だな」などのご希望について本人や家族と話合いましょう。その他に生活の状況や家族関係などの情報も重要です。

今後の治療とケアの目標について話し合い

患者様の病状と予想される経過、価値観と希望をふまえて今後の治療とケアの目標を話し合います。
治癒が不可能な病気(進行がん、心不全など)が悪化していく中で療養生活で一番大事にしたいことはなにか(例えば:身の周りのことが自分でできること、家族のそぼにいるなど)、さらに病気の進行で十分に考えることができなかったり、自分の考えを伝えられなくなった場合のことも含めて話し合います。

例えば、「人工呼吸器、人工心肺は嫌だ」など詳細なことでも、「集中治療室より自宅でゆっくりしたい」のようなざっくりしたイメージでも構いませんが、本人の希望がより尊重されやすくするために、より具体的な話し合いをされるケースもあります。

本人の意思を推定する者の確認と本人の意思の共有

上記1-3の話し合いは医療・介護従事者だけではなく、本人から信頼できる家族や友人とも話し合い・共有することも重要です。
特に病状の進行に伴って本人の意思決定が難しくなった時に、どのような治療・ケア・生活を望むか、本人の意思を推定する者との話し合いが必要となることもあります。

ACPの注意点

※「気持ちが変わること」はよくあることです。
治療やケアに対するご希望は周りの状況や経験によってかわります。ACPはプロセスを重要視しており、決め事だけを目的としているわけではありません。楽しい家族の時間患者本人から気持ちの変化を伝えられたら、医療・介護従事者は家族や友人やと話し合い、情報を共有しましょう。

ADとDNAR

事前指示書(AD)とは「患者や健常な人が将来自らが判断能力を失った際、自分に行われる医療行為に対する意向を前もって意思表示するための文書」とされています。例えば「人工呼吸器使用したくない」、「植込み型除細動器を受けない」など具体的な要望が定まった時に、それを一覧に書き起こした文書となります。ADは状況次第でいつでもかわりうるものであり、法的拘束力はありません。

DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)とは「心停止状態の際に心肺蘇生処置すべてを試みないこと」で、ADの一部となります。日本集中治療学会は「DNAR指示のあい方についての勧告」を発表しており、確認しておきましょう
Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示のあり方についての勧告(2016/12/20)日本集中治療医学会雑誌掲載

DNAR指示は心停止時のみに有効。それ以外の医療・看護については別に議論すべきである。
DNAR指示と終末期医療は同義ではない。
DNAR指示に関わる合意形成は終末期医療ガイドラインに準じて行うべきである。
DNAR指示の妥当性は本人、家族と医療・ケアチームが繰り返して話合い評価すべき。
「挿管しないけど胸骨圧迫は行う」、「電気ショック1回まで行う」などの部分的ななDNAR(Partial DNAR)指示は行うべきではない。

ACPとADの関係
以上述べたように、DNAR指示はADの一部であり、ADはACPの一部であるに過ぎません。在宅でよく行われている「急変時の確認」や「終末期の確認・同意書」はADであり、ACPをすっ飛ばしてAPを行うのはいかがなものかと思います。

ACPの問題点

ACPは重要ですが、いくつかの問題点も挙げられています。ACPを順調に進めるのに、これらの問題点を理解し、ACPの適応や行うタイミングの判断が必要です。

健康時障害の受け入れが難しい
経過の予想と治療適応判断の難しさ
早すぎるACPは望まれていないこともある.
家族と本人の意向が一致しない場合がある。
患者・家族にとってつらい経験になる可能性がある
死を意識することで希望の喪失と抑うつの原因になる
認知症や老衰においてはいつからが終末期が不明瞭である
唐突にACP開始することで医療者と患者の関係が悪くなることがある。
「縁起でもない」「言霊」そんな言葉がある日本の文化的背景に合わず、時間と手間がかかる
患者は自分の意向が尊重されることを重要視しない(意向は病状によって変化しうるので、自分の意向は必ずしも尊重されなくてもよいと考えている)。

まとめ

・ACP(人生会議)とは、本人の価値観を確認、共有し、医療とケアに対するご希望を話し合うプロセスであって、一度話したことが全てではありません。
・最期まで医師主導で意思決定していくべきではありません。
・患者の価値観や希望を医療・介護職、家族で共有し、チームでACPを行うことが、患者が望む過ごし方を実現するのに必要なことです。

院長
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いくつかの問題点と限界も指摘されており、ACPに関わる関係者にそれ知った上でACPのサポートを行うようにしましょう